先日、「かわいい」ものを見ると、仕事の効果をあげるという研究成果が発表され、新聞やTVなどで話題となった。
広島大学の入戸野(にっとの)宏準教授の「かわいい」についての研究だ。
入戸野先生は、生理心理学が専門だ。
先生は、5年ほど前から現代日本文化のキーワードの一つともなっている「かわいい」の研究を始めた。
「かわいい」というのは日本で生まれた文化現象なのだから,日本の心理学者がもっと真剣に取り組んで、
世界に発信すべきだという信念で始められたようだ。
しかし、「かわいい」を科学の対象とするのは難しかった。
「かわいい」ということを科学的に、客観的に定義できなかった。
悩んだ末に「コロンブスの卵」のような発想の転換があったという(入戸野先生のブログより)。
「かわいい」を感じる「対象の性質」ではなく,それに「接する人が抱く感情」として捉えなおす方法だ。
「相手」ではなく、「こちら」に焦点をあてるという発想の転換だ。
さて、今回の実験。
大学生に、愛らしい子犬や子猫の(かわいい)写真を見せ、注意力が必要な作業をさせると、正確性が高まったという。
何故だろう?
先生の分析:
「かわいい」という感情は、対象に接近して詳しく知ろうという機能がある。
そのために、細部に注意を集中し、作業の正確性を高める効果が出たのでは…。
この分析には、「なるほど」という気もするし、まだ何か別の原因やプロセスがあるような気もする…。
例えば、「ホッ」とすることによるリフレッシュ効果や自分の中にあたたかな感情に気づいた効果?とかはどうなのだろう…?
以前、日本文化の研究として、「粋(いき)の構造」や「甘えの構造」などの名著があった。
今後の入戸野先生の「かわいい」の研究にもますます期待していきたい。