「ギャップ・アプローチ」と「ポジティブ・アプローチ」

 課題解決において、「ギャップ・アプローチ」と「ポジティブ・アプローチ」が対比される場合がある。

「ギャップ・アプローチ」とは、 「ギャップ」すなわち「差」を明確にすることを主体としたアプローチだ。 「ギャップ」は、「埋めなくてはならない『空白』」でもある。
したがって、このアプローチは、「足りないもの」に焦点を当てる。
これは、多くの場合の原則的なアプローチだ。

これに対して、「ポジティブ・アプローチ」とは、 「積極的」「肯定的」アプローチだ。
「足りないもの」ではなく、「持っているもの」を肯定的にとらえ、 それを伸ばすことで、理想に到達しようとするものだ。
この「ポジティブ・アプローチ」が、組織開発の中で重要になっている。

「機械」が壊れていて、それを直す、修復するという場合には、 「ギャップ・アプローチ」で、論理的に、足りない部分を埋めていって、うまくいくことが多い。
しかし、人間を含んだシステムの場合、 「ギャップ・アプローチ」で、「まだ足りない」「もっと努力しろ」と鞭をあてても、 なかなかうまくいかない…。

人間には感情があり、論理的にはわかっていても感情としてついていけなくなったりする。
また、人間の問題に論理だけで突き詰めようとすると、 「いい加減な人間の存在」という問題になってしまいがちだ。

人間がいきいきと働ける職場づくりといった組織開発の場合は、 「ポジティブ・アプローチ」が適している。
人々の強みや長所を土台に、これらを最大限発揮するための対話を積み重ねていく。

「AI(アプリシエイティブ・インクワイアリー)」や「ワールドカフェ」、「OST]などの技法が ますます注目されている。
しかし、こうした研修やイベントで、「ポジティブ・アプローチ」が盛り上がるのだが、 実際の職場での日常的なマネジメントの場で、それをどう生かしていくかが問題になっている。

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この記事を書いた人

 劇作家の井上ひさしさんの「難しいことをやさしく、やさしいことを深く、深いことを楽しく」という言葉が好きです。さらに付け加えるとすれば、「そしてシンプルに」となると思います。
 松下幸之助さんの「経営とは、生きた総合芸術である」という言葉をラーニングデザインによって研究して、お届けしています。
 著書「直観でわかる経理のしくみ」(新版)、「直観でわかる人事のしくみ」(共著)いずれも東洋経済新報社刊など。
 経営ラーニングデザイナー。公益財団法人日本生産性本部認定経営コンサルタント。価値創造研究所所長。㈱ラーニングデザイン・アソシエーション会長。社内研修プログラム「ワールドフェイマスプログラム」開発責任者。

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