「不射の射」…「名人」の至高の境地とは

中島敦の「名人伝」に、弓の名人の物語があった。

弓の達人が、山の中の伝説の弓の名人に勝負を挑みに出かけた。

しかし、そこで、名人の想像を超えた境地を教えられる。

弓の名人は、「弓」の道具も使わずに、「無形の弓」によって飛ぶ鳥を落とすのだ。

名人曰く、
「弓」という道具を使って、鳥を落とすのは、「射の射」であり、
それを超えるのが、「的を撃たずに落とす」「不射の射(ふしゃのしゃ)」という世界。

常識を超越した世界だった・・・。

さて、達人は、その名人の下で、多くの年月の修行を終え、山を降りてきた。

彼もまた常識を超えた名人になっていた。

「弓」という存在と名前も忘れてしまったのだった…。

長年の間、何かに打ち込んでいくと、
常人では想像もできない世界に到達するということがあるのだろう。

先日亡くなった野球の川上哲治氏は、「打撃の神様」と言われた強打者だったが、
全盛期には、ピッチャーの投げたボールが「止まって見えた」と言っていたそうだ。

ささやかなものでも、
長年、打ち込んでいけば、
普通では見えない思わぬ深さや面白さを
見出していけるものもあるのだろう…。

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この記事を書いた人

 劇作家の井上ひさしさんの「難しいことをやさしく、やさしいことを深く、深いことを楽しく」という言葉が好きです。さらに付け加えるとすれば、「そしてシンプルに」となると思います。
 松下幸之助さんの「経営とは、生きた総合芸術である」という言葉をラーニングデザインによって研究して、お届けしています。
 著書「直観でわかる経理のしくみ」(新版)、「直観でわかる人事のしくみ」(共著)いずれも東洋経済新報社刊など。
 経営ラーニングデザイナー。公益財団法人日本生産性本部認定経営コンサルタント。価値創造研究所所長。㈱ラーニングデザイン・アソシエーション会長。社内研修プログラム「ワールドフェイマスプログラム」開発責任者。

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