「トラウマ」の解消…「EMDR」法の衝撃

「トラウマ」とは、もともとギリシャ語の「傷」を表わす言葉。
現代の「トラウマ」は、戦争や大事故を原因とする「心の深い傷」だ。

大きなトラウマだけでなく、親との関係がうまくいかなかったなど比較的小さなトラウマもある。
様々な身体の不調や「問題行動」の奥に、幼少期の「トラウマ」が原因となっていることも多い。

そんな「トラウマ」を、簡単な「目の運動」によって、見事に解消してしまう治療法がある(先日NHKTVで再放送されていた)。

「EMDR(イーエムディーアール)」だ。
初めの二文字「EM」は、目の運動(アイ・ムーブメント)を意味している。
眼球の運動によって、脳に「情報の再処理」を促進させるということのようだ…。

専門的な訓練を受けた治療者が、まず患者の心の底の「トラウマ」にアクセスする。
その後、治療者は二本の指を患者の目の前に出して、ゆっくり左右に動かす。

患者は、その指を目で追う。
その過程で、心の傷を受けた状況を「良いイメージ」で消していく・・・。

番組では、「トラウマ」に悩む人が、薬に頼らず、短期間に劇的に立ち直っていく姿が紹介された。
この方法は、国際トラウマ・ストレス学会からも「治療に有効である」という認定を受けている。

治療は有効であるが、「なぜ治癒するのか?」は、まだわからないらしい。
まるで、「マジック」のようであった。

扱う課題は異なるが、私が「経営コーチング」で実施する方法(「akariプロセス」)は、ブリーフセラピー系であり、過去に遡らず、未来に焦点を当てて、解決行動を創造するものだ。

一方、この「EMDR」では、まるで、フロイドの精神分析のように、まっすぐ過去へ糸を降ろし、
井戸の底に潜む「暗いもの」をサッーと消してしまう手法のように思える。

まるで黒板に描かれた「いやな絵」を、「黒板消し」できれいに消し去るように…。

両眼を左右にリズミカルに動かしてみると、確かに心へのアクセスの「隙間」ができる感じがする。
左脳と右脳をつなぐ脳梁(のうりょう)での情報処理を促進し、記憶が書き換えられる「余地」が生まれるのか・・・?

「EMDR」というあまりに単純な治療法の、あまりに大きな効果には、驚きを覚えた…。

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この記事を書いた人

 劇作家の井上ひさしさんの「難しいことをやさしく、やさしいことを深く、深いことを楽しく」という言葉が好きです。さらに付け加えるとすれば、「そしてシンプルに」となると思います。
 松下幸之助さんの「経営とは、生きた総合芸術である」という言葉をラーニングデザインによって研究して、お届けしています。
 著書「直観でわかる経理のしくみ」(新版)、「直観でわかる人事のしくみ」(共著)いずれも東洋経済新報社刊など。
 経営ラーニングデザイナー。公益財団法人日本生産性本部認定経営コンサルタント。価値創造研究所所長。㈱ラーニングデザイン・アソシエーション会長。社内研修プログラム「ワールドフェイマスプログラム」開発責任者。

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