「ブリーフセラピー」は、ベイトソンの「情報」に注目する

「パラダイム」とは、前提となるものの見方のことだ。

一般の心理学と「ブリーフセラピー」では、似ているようで、実は大きな前提の違いがある。
一般の心理学では、心の動きについて、何らかの「エネルギー」で説明することが多い。

例えば、有名なフロイトの「性的エネルギー」などのように。

これに対して、同じ、「心」を対象としても、
実践的な治療である「ブリーフセラピー(短期療法)」では、
こうした「物理学的な概念(比喩)」は使わない。

では何を使うのか?

「情報」

という枠組みで、「精神(マインド)」を説明するのだ。
情報とは、何かの「違い」を知ることで生れる。

「AとBの違い」に反応するものだ。

ブリーフセラピーの理論的基礎となったのが、こうした「情報」をベースとする考えだ。
この思想は、文化人類学者であり、20世紀最大の認識論者であったグレゴリー・ベイトソンによるものだ。

ベイトソンによれば、「マインド」を持つ生物と「マインド」を持たない無生物の違いは、
「情報」の違いに反応するかどうかで決まる。

生物は情報(違い)に反応するが、
無生物は、情報(違い)に反応しない。

猫は、気温が下がる(これまでの気温から)と、身体をますます丸くして眠る。
気温が上がる季節になれば、身体を思い切り伸ばして、うたた寝をする。

しかし、「石」は、気温が上がっても、下がっても(違いがあっても)反応しない。

ベイトソンは、情報(違い=差異)に反応するものを「生物」とし、
反応しないものを「無生物」とした。

生物は、「マインド(精神)」を持ち、無生物は、「マインド」を持たない。

我々の感覚も、外の世界の「違い」を捉えるものだ。

「甘い」「辛い」といった味覚も、「甘くない」「辛くない」という状態からの変化(差異)を
捉えるものと考える。

「ブリーフセラピー」では、このように、「マインド」の働きを
エネルギー的なモノとして捉えるのではなく、
「差異に反応するかどうかという情報」として捉える…。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

 劇作家の井上ひさしさんの「難しいことをやさしく、やさしいことを深く、深いことを楽しく」という言葉が好きです。さらに付け加えるとすれば、「そしてシンプルに」となると思います。
 松下幸之助さんの「経営とは、生きた総合芸術である」という言葉をラーニングデザインによって研究して、お届けしています。
 著書「直観でわかる経理のしくみ」(新版)、「直観でわかる人事のしくみ」(共著)いずれも東洋経済新報社刊など。
 経営ラーニングデザイナー。公益財団法人日本生産性本部認定経営コンサルタント。価値創造研究所所長。㈱ラーニングデザイン・アソシエーション会長。社内研修プログラム「ワールドフェイマスプログラム」開発責任者。

目次