「経営者の役割」 チェスター・バーナード その1
チェスター・バーナードには、畏敬(そして敬愛)の念を持ってきた。
「経営者の役割」、この本は、経営の勉強を始めて、かなり早い時期から書棚にはあった。
経営コンサルタントの先輩からも「良い本だよ」と薦められたこともあった。
しかし、正直、しばらくは、「歯が立たな」かった。
組織と人間という重いテーマを具体的というよりも抽象的に扱う難解で重厚な表現を読みこなす準備も能力もなかった。
しかし、バーナードの提出した組織の定義と、なぜ人は組織に参加するのかという論説ほど明快なものは、他に知らない。
数年前に、ある研究会で、発表のために、久しぶりにこの本を手に取り、読み直す機会があった。
自分の経営についての思考のベースにバーナードの組織論があって揺るがないことを再確認した。
それは、当然のことだったが、それ以上に、この本の最終結論の部分に、年を経てようやく思い当たるものがあることを発見した。
「全体としての創造職能がリーダーシップの本質である」
「組織の存続は、それを支配している道徳性の高さに比例する。すなわち、予見、長期目的、高遠な理想こそ、協働が持続する基盤なのである」(原著282頁)
など…
こうした最終結論に至るバーナードの論述を少しずつ追ってみたいと思う。